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  3. 第47回 勝沼ワインゼミナール 【特別講演】 勝沼とナパの共通点とは

2026年4月18日、ぶどうの丘で「勝沼ワインゼミナール」が開催されました。

今回は、ナパ・ヴァレーから講師を招き、「ナパ・ヴァレーワインの歴史と知識の共有」「ワイン業界におけるブランド構築」についてのお話を伺いました。なんと、勝沼とナパ・ヴァレーには共通点があるんですって。

世界的な高級ワイン産地として知られるナパ・ヴァレーと、山梨・勝沼に共通点があるなんて、正直かなり驚きました。

なぜナパは“ブランド”になれたのか。
そして、勝沼ワインはこれからどうなっていくのか。

参加者の皆さんと、その可能性について意見を交わせたとても貴重な時間でした。

ナパ・ヴァレーのワイン産地イメージ

第47回 勝沼ワインゼミナール 概要

こちらがFacebookで募集された概要です。


勝沼でナパの話が聞けるなんてびっくりですよね。
喜んでワイン仲間のチイモさん(@tiimovin)と参加してきました。

チイモさん
チイモさん

ナパって、アメリカでしたっけ

そこからかーい!

キジトラ
キジトラ

チイモさんは輸入ワインのことになると急に初心者に擬態しますw
日本ワインアドバイザーにも合格されるほど知識をお持ちの方なのですが…。

さて、地図でナパの位置を確認してみますね。
サンフランシスコの北80kmくらいでしょうか。

まずはナパ・ヴァレーのワインについて基本的なことから説明がありました。

Napa Valley Wine: History, Industry, Structure, and Knowledge Sharing

講師:ジャネット・カップマイヤーさん

講師のジャネット・カップマイヤーさんは地質学者。カリフォルニア大学デイビス校で栽培・醸造を学ばれ、現在はコンストレーションブランズ社(アメリカの大手飲料メーカー)、マイナー・ファミリー・ワインズ(ナパのワイナリー)などでワインに携われているそうです。

ゆっくりはっきり話してくださるので、英検3級の私でもだいぶ聞き取れました(笑)
※もちろん通訳あり

講義の内容

ポイントを簡単にご紹介します。
まずはhistory、カリフォルニアワインの歴史からお話しされました。

カリフォルニアワインの歴史は、スペイン系の宣教師が布教のため教会を建て祭礼用のワインを作り始めたこと。その後ゴールドラッシュで人口が増えワイン産業が発達したこと、禁酒法やフィロキセラの話、パリスの審判で世界的に認められるようになった…などのお話を伺いました。この辺はワインの勉強をされた方なら耳にされたことがあるかもしれませんね。(知っている内容だから聞き取れただけかもしれない)

カリフォルニアワインの課題

続いてIndustry, Structure, and Knowledge Sharing、産業構造そして知識共有です。
カリフォルニアワインの課題は「消費が減っており、価格の維持が難しい」ことと、「降雨量が減り、山火事で耕作地が減っている」こととのこと。

大規模な山火事がニュースになっていましたもんね。
火事の年のワインは、ビニールにタバコの灰を落としたような香りがするんだとか…。

価格についてのお話もありました。
だいたいワイン1本の値段 × 100がぶどう1トンの値段なんだそうです。各地域ごとの価格差の表も見せてくださいました。同じカベルネでも、ナパ・ヴァレーは2,000~3,000ドルになるのに対し、他の地域は1,000ドル以下のところも。名産地が高騰するのはわかりますが、改めて見るとすごい差ですね。

以下の様な質問がありました。

質疑応答

地域ごとにそこまで差があるのは適切なのか?AVAごとに価格が決まるのか?

土壌の違いのほか、水の調整、光をコントロールしたかどうかなどさまざまに異なる。同じ農園内でも、ワインメーカーが「ここの区画が欲しい」と収穫時期まで指定して購入したものが高値をつけるなどある。AVAは広いので、同じAVA内でも開きがあり、AVA名で価格が一律に変わることはない

カリフォルニアのワイナリーの給与水準はどれくらいなのか?

お金持ちになりたい人にはお勧めしません(笑)

時給いくらなど具体的な金額のお話もありましたが、日本とは物価も異なるので、額面は高そうなんだけど豊かというわけではないみたいです…。

休憩をはさみ、次は「ワイン業界におけるブランド構築」のお話でした。

Brand Building in Wine Industry

講師:アンドリュー・M・アイザックスさん

講師はアンドリュー・M・アイザックス(Andrew M. Isaacs)さん。カリフォルニア大学バークレー校で気候変動やビジネス戦略を教えていらっしゃいます。ナパに広い土地を購入して家を建て、ワインも作られているんだとか。日本に住んでいたこともあるそうで、日本語を交えながら楽しく講義してくださいました。

Andrew M. Isaacs"Brand Building in Wine Industry"

講義の内容

講義のポイントは以下の通りです。

ワイン作りでやらなければならないことは3つ。

  • ブドウを育てる
  • ワインを育てる
  • ブランドを育てる

どれもとても難しいとのことです(笑)

ブランドとは販売側が主張するのではなく、消費者がお互いにそう認識するようになって初めてブランドの価値が出るもの。アイデンティティ(ビジュアル)、ポジショニング(信頼性など)あるが、一番は「感覚・経験」が大切だとのことです。

確かに自分で勝手に言っていても、みんながそう感じないと意味ないもんね

キジトラ
キジトラ

ジャパニーズウイスキーとの共通点

ここで「ジャパニーズウイスキー」について言及されました。

日本のウイスキーは、この20年ほどで世界で認められるようになってきたが、そもそもウイスキーとは日本原産のものではない。同様に、ワインも日本原産のものではない。
ジャパニーズウイスキー同様に、日本ワインも世界で認められるようになるのではないか?

むしろ、ワインの方がアドバンテージがあるかもしれない。たとえば「甲州」種。甲州は地名でもあるので、他が真似できないブランドとして確立できる。また、ウイスキーのように30年も寝かせる必要がない。

ナパ・ヴァレーも、60年前にロバート・モンダヴィが「ナパをブランドにする」と言ったことから始まっている。

と聞いて、ドキッとしました。
確かに今確立しているブランドイメージは、誰かが作り上げたもの。

すると、勝沼、甲州も誰かが作り上げていくのかも。。
そういえば、メルシャンのキャッチコピーは「日本を世界の銘醸地に」でしたね。

ワイン銘醸地のブランディング

続いて、各銘醸地を例にどのようなブランディングをしているか解説がありました。

・ボルドー……シャトー、格付け、人の作った物語
・ブルゴーニュ……その狭い地域で、その人が育てた物語

NIKEやTOYOTAなどのブランドと比べると、ワインのブランドは産地に紐づいた価値がある。

・シャンパーニュ…「パーティ」これこそがマーケティングの産物と言っていい。「お祝い=シャンパーニュ」という付加価値を人間が作ったもの。

シャンパーニュはイマイチなワインに砂糖入れてもう一度発酵させたものだ、とちょっとひどいこと言っていました(笑)それに対して、ナパバレーのブランディングについては「最高のブドウを作った」と一言(笑)

ナパが幸運だったのは、ひとつはモンダヴィの存在。
もう一つは、パリで名前をあげたこと。

パリスの審判のことですね

キジトラ
キジトラ

ロバート・モンダヴィは、「技術革新と戦略的なマーケティング戦略でカリフォルニア・ワインを世界的に認知されるレベルに高めた第一人者」とされています。(Wikiより)まさに「ナパ」をブランディングした方ということですね。

ふむ、自伝でも読んでみるかな……。

ナパと甲州の類似点

アンドリューさんは、「甲州はナパと共通点がある」と言います。

  • 甲州市は東京、ナパはサンフランシスコ、とといった大きな消費地が近い。
  • とても美しい
  • そこに暮らす人が、新しいものをやっていこうという気概を持っている

都会が近いということは、レジャーに訪れやすく、質の高い高価なリゾートレストランやホテルが賑わう。たとえば、アメリカのTOP10のレストランは、ナパ・ヴァレーのレストランが多数ランクインしている。

高級レジャーホテルといわれると、勝沼というより八ヶ岳をイメージしてしまいますが。
勝沼にもホテルを作る計画があがっていますが、さてどうなるのでしょうね。

まとめ

甲州という場所に価値がある、ブランドになる物語が重要。
南アフリカで良いワインがたくさん作られているが、彼らはブランドにするためにどこまでやっているだろうか?ナパバレーはそれをやった。

質疑応答

消費者向けに、ワインを選ぶ時のアドバイスをお願いします。

いろんなワインを買って、試して、飲んでください。新しいワインを試したらノートに書き留めて、それを続けるとよい。

なるほど、私ももっとまめにブログにアップするようにしよう…

ナパと勝沼では決定的に広さが違うし、生食用ブドウの方が多い。そんな状況でナパのようになれるのか?

共通性はある。ナパも60年前は少なかった。他の農産物の土地をワイン用に開墾した。それらだけでなく、AVAなど色々な要素があってワイン産地として成功した。

懇親会

セミナー後は懇親会でした。
ナパバレーのワイン、甲州のワインをテイスティング(飲み?)しながら、講師や参加者の皆様とご歓談です♪

第47回 勝沼ワインゼミナール懇親会会場

ナパバレーのワイン

参加者みんな、ナパのワインにまっしぐらでした!
こんな素晴らしいワインをいただけましたよ!

第47回 勝沼ワインゼミナールナパワイン プリズナー、ソルダー
ワイン名ブドウ品種産地参考価格
The Prisoners 2023
RED WINE
ジンファンデル 40%、
プティ・シラー 19%、
シラー 17%、
カベルネ・ソーヴィニヨン 10.5%、
メルロー 8.5%、マルベック 5%
ナパ$45
¥11,999
¥13,925
The Prisoners 2022
PINOT NOIR
ピノノワールソノマ$45
¥13,519
¥13,925
SOLDER 2023シラー、グルナッシュ、
ムールヴェードル
ナパ$45
¥16,995

いずれもThe Prisonersのワインでした。こちらはジャネットさんの会社のコンステレーション・ブランズが所有しているそうですよ。素晴らしいワインを持ってきてくれたんですね。

各地の甲州

さて甲州です。
山梨の甲州はもちろん、日本各地の甲州、さらにはドイツ産の甲州も集められていました。

第47回 勝沼ワインゼミナール懇甲州ワイン

びっくりしたのが、このワイン注いでくださったのはルバイヤートの大村社長でした。
自社のワインじゃないのにボランティアでサービスして、さらに参加者の質問にも答えられていました。
分け隔てなさすぎてびっくり。

生産地ワイン名生産者名参考価格
ドイツ
ラインガウ
ラインガウ甲州
トロッケン 2023
ショーンレーバー
ブリュームライン
¥5,588
大分県 宇佐市安心院
諸矢 甲州 2024
安心院葡萄酒工房¥3,177
宮崎県 都農町プライベートリザーブ甲州都農ワイン¥3,950
島根県 出雲市島根わいん縁結 甲州島根ワイナリー¥2,805
大阪府 柏原市合名山南西畑
堅下本葡萄 2025
カタシモワイナリー¥3,630
山梨県 勝沼町K531
GI Yamanashi 2023
MGVsワイナリー¥3,190
山形県 鶴岡市鶴岡甲州2024 古木ピノ・コッリーナファーム
&ガーデンワイナリー松ケ岡
¥4,180

ドイツでも甲州が作られていると聞いてはいましたがいただいたのは初めて。すごくミネラリーでドライなんですね。柑橘っぽさは全然なく、少しオイリーさが感じられましたが、先入観かしら。。

驚いたのは都農ワインの甲州です。リッチでアロマティック、かつドライに仕上がっていました。甲州がこんなトロピカルになるなんて……。作る場所でここまで違うんですね。大変興味深い経験をさせていただきました。

比較するにはあまりに価格差がすごい

キジトラ
キジトラ

質問してみた

さて、私は内気なタイプなのであまり自分から積極的に話しかけたりはしません。
いつも誰かが質問してるのを聞いて、勉強になったなーと勝手に満足しておわります。

でも最近、「もっと積極的に質問して、いろんなことを教えて貰えばよかった」と後悔することがあったので、疑問に思ったことを話しかけてみることにしました。

キジトラ
キジトラ

アンドリューさんはどの甲州が好きですか?

いろんなワインをテイスティングされている途中だったので「ちょっと待って(笑)」と日本語で答えてくださいました。後から伺ったら、シャトレーゼの甲州がお気に召したみたいです!

それと、今日一番の本題を聞いてみました。

キジトラ
キジトラ

甲州がナパ・ヴァレーのようになるには、まずどんなことに取り組んだら良いかアドバイスを伺えますか?

これは、はっきりとしたお答えはなかったのですが、「一つ一つ、目の前のことに取り組んでいくことが大切だ」というお話をされていました。

感想まとめ

以下は私の考えですが「どうしたらいいんですか」なんて丸投げで質問したのは良くなかったですね。

真剣に取り組んでいれば、「こういうことをしたいんですが、こういう課題がある。良い方法はないか」など、より具体的な質問ができますよね。建設的な話ができるのはそこからなのかもしれない。部外者がすみません……。

甲州はどんなブランディングをするのか

さて、勝沼はナパ・ヴァレーのようになれるのでしょうか?

でもそれって、甲州やマスカットベーリーAのワインが1本1万円以上になって、勝沼が高級リゾート地になるということ?それでは一部の富裕層向けになって、気軽に楽しめなくなるのでは…と心配になりました。

しかし、高級だけがブランディングではないよね。

そういえば、「勝沼のグランクリュ・鳥居平がブルゴーニュの特級のようになれば…」と、新田さんがお話されていたのを思い出しました。若手醸造家の育成に尽力していきたいとお考えのようでした。新田さんにはどんなビジョンが見えていたのでしょうか……。

他の農産物の土地をワイン用に開墾できるのか?

農家さんに聞いた話ですが、ワイン用のブドウを作るより、シャインマスカットを作った方が3倍の値段で売れるんだそうです。それならそみんなシャインマスカットにしようと思いますよね…。

さらに、これからワインを作ろうという人は、山梨より長野や北海道に行くんだそうです。
温暖化の昨今、より冷涼な気候がよいという問題もありますが、現実的に山梨では畑が購入できない、借りられないという事情もあるんだそうです。山梨でブドウに適した土地はすでに栽培されており、農家さんも取引先が決まっており、山梨での新規参入は難しそうです。

そのため、今から山梨、甲州市でワイン用ブドウの栽培地を増やそうと思っても、なかなか難しいのではないかと思ってしまいました。ナパ・ヴァレーはどうだったのかなぁ。

AVAなど色々な要素を整備すれば発展させられるのか?

AVAとはアメリカのワイン産地呼称のことですね。
山梨は2013年同様の制度で「GI」が制定されています。

「GI Yamanashi」は、このワインが「山梨県が産地であること」と「厳格な品質基準をみたしたものであること」を保証するものです。

国税庁 知ってきただきたい地理的表示「山梨」
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/pdf/04210404.pdf

あら、これ制定して10年以上経つんですね。
消費者目線としては、GIがついているから買おうとは、……ごめんなさい、あんまりならないかなぁ。

山梨産の証明になるので、産地こだわってお土産を買いたい人によさそうですね。

先日、勝沼のワインメーカーさんに、GIについて意見を伺う機会がありました。

などでした。

  • 申請したかったが、ブドウ品種が指定されており新しいものはダメだった
  • 積極的に申請するようにしている
  • ノーコメント(興味がない)

もともと、輸入した濃縮果汁を使って日本で作った「国産ワイン」が多かったので、それと差別化する意味合いが大きかったのではないかなと感じました。GI制定されて10年も経っているけど、歴史やブランドを作るのは、もっともっとかかりそうですね。

まとめ

このように、すぐに「いろいろ難しい」と考えてしまいましたが、そこから誰かが「甲州をブランドにするストーリー」を描いて現実にしていくのでしょうか。ねー、新田さん。

そんなことを考えていたら、メルシャンの安蔵さんがこのように締めのご挨拶をされました。

「甲州というアドバンテージがある、山梨も諦めてはいけない。祈念して……!」

第47回 勝沼ワインゼミナールご挨拶

安蔵さんもプライベートでのご参加なのに、代表してご挨拶してくださいました。
希望を奮い立たせる言葉をとっさに選べるのすごい。

キジトラ
キジトラ

かっこええなぁ


甲州にはこれからどんなブランドストーリーが描かれていくのでしょうね。
私はたくさん飲んで応援するね!