勝沼醸造 特別見学試飲レポ@ゆるワイン部 山梨ワイナリーツアー

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この記事は、山梨の人気ワイナリー、勝沼醸造の特別見学内容を詳しくまとめたものです。

エルブランシュのカブさん(@kab_aileblanche)率いる「ゆるワイン部」(https://lounge.dmm.com/detail/3584/)ご一行様が山梨に遊びに来てくれました!(総勢18名!)

山梨ワインの聖地、新田商店さんで爆買い(笑)し、

シャトー・メルシャンでランチ&ワイン&見学!

そして、最後は勝沼醸造さんへ!というコースでした。

今回はカブさんのご紹介で特別に見学と試飲をご案内いただけたんです♪貴重なお話がたくさん伺えたので、詳しくレポしますね!

勝沼醸造さん見学レポート!

勝沼醸造の看板と仮店舗のご案内

現在、勝沼醸造さんはショップリニューアル中(2023年6月現在)。ご時世のせいか資材の調達に時間がかかり遅れたんだとか。(夏ぐらいには……とのお話でした)。でも、おかげでちょっと珍しいもの見れちゃいました!(後述!)

ブドウ畑見学!ブドウ栽培の歴史

まず、ショップ裏手にあるブドウ畑を見学させていただきました。
畑を見ながら、日本のブドウ栽培の歴史について詳しいお話を聞きましたよ!

勝沼醸造の甲州の畑

ブドウ栽培1300年、ワイン作り130年

日本のブドウ栽培は奈良時代から始まっていましたが、長い間ブドウといえば生食用でした。病気になった時に体力を回復させるには栄養…糖分が必要ですが、当時は砂糖が高価だったので、ブドウを食べてブドウ糖を補おうとしていたそうです。今でも点滴にブドウ糖って入っていますよね。このようにブドウは体力を回復させる役割、薬の代わりとして用いられていました。これが1,000年以上続き、明治になってやっと政府の政策の一環でワインづくりが始まりました。

海外ではブドウ栽培といえば、イコールワイン作りでそれこそ何千年という歴史がありますが、日本ではブドウの栽培は1,300年ワイン作りはまだ130年とのこと。そう考えるとワインの発展はごく最近のことなんですね。

そのため、日本のブドウ栽培農家さんは「食べるために最高のブドウ」を作ってきた歴史が長く、「ワインは余ったブドウで作るもの」だったんですって。ナルホド。要するにワイン用のブドウは品質が良くないので、ワインは補糖して作るのが当たり前だったそう。

キジトラ
キジトラ

「ワインなんて売れないブドウで作ってんだ。何入れてるかわかったもんじゃない」って言ってるブドウ農家さんに会ったことあります。昔はそういう一面もあったんですね…。

日本ワインの評価はごく最近

日本にワインが広まったきっかけは、1970年の万博博覧会。ここからワインというお酒が少しづつ浸透していきました。ワインの消費量の統計がとられるようになったのもこの時で、当時は1人0.4リットル/年だったそう。(ここで、今の私たちなら30分だねと爆笑)。60年経った今、やっと4リットル/年にあがってきた。飲まない人もまだまだ多い。(あなたたちが平均を爆上げしてくれてるんですって言われたw)

そして勝沼醸造の人気ワイン、アルガブランカシリーズが2004年に立ち上げられました。
その頃でもまだ日本ワインの認知度は高くなくて、洋食レストランにはまず日本ワインなんて置いてなかった。和食のお店で使っていただけるよう取り組みをしてきたが、なかなか理解していただけなかった。依然、ワインといえば「お土産用の甘いワイン」というイメージが強かった。

キジトラ
キジトラ

確かに、その頃は地元のワインをお土産に買って面白がる程度でした…。

そしてようやくここ5〜6年(長くても10年くらい?)で少しづつ変わってきている。ワイナリーもどんどん増えて今500くらい、長野が70、北海道が増えており、山梨は90で追われているんだとか(笑)

山梨は他の産地に押されてる?

さて、他の地域でワイナリーが増えているのに、山梨があまり増えていないのはなぜでしょう?

それは、山梨は古くからワインの生産が盛んなので、農家さんは作ったブドウをどこに売るか既に決まっているため、新規参入者がブドウを売ってもらうのが難しいからなんだとか。

そのため、新しくワイン作りに挑戦するなら、山梨より広い土地がある北海道や長野が人気なんだそうです。確かに先日長野に行った時、耕作放棄地を開墾して畑にしているという話を伺いました(詳しくは以下の記事もごらんください)

キジトラ
キジトラ

そりゃ広さでは北海道に敵わないよね…

そう聞くと、つい負けたくないと思ってしまいますが(笑)競う必要なんてないですよね。その土地らしい美味しいワインが増えるならこんな嬉しいことはありません。

続いて、勝沼醸造のブドウ栽培についてご紹介いただきました。

勝沼醸造の畑の歴史

勝沼醸造の甲州の畑 一文字短梢

勝沼醸造といえば甲州!自慢の畑を見せていただきました。
一文字短梢、草生栽培で作られています。

長男が全て抜いてしまった!?

この畑、今は甲州ですが以前はカベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネを植えていたんだそう(1990年)。しかし長男がブルゴーニュから帰ってきたら、「我々は甲州に特化して勝負するんじゃないのか」と、「やっぱり甲州で行こうよ」と言って抜いてしまったそうです。まじですか……!思い切りましたね。そして、従来通りの仕立て方ではなく、ワイン用ブドウに合わせたこの一文字短梢スタイルにしたそうです。これが12、3年前の話だとか。

気候変動でチャレンジした品種とは…

勝沼醸造 シラー

その隣にある、この垣根栽培のまだ小さなブドウの木は、去年植えたばかりの「シラー」!!

以前はメルローを植えていたけどうまく対応できなかったので、次はシラーにチャレンジしているんだそう。近年の気候変動に合わせ、暑さに強い南仏のブドウを試しているんだとか。そういえばメルシャンでも今後はシラーに力を入れていくと聞いたような……。この畑は去年植えたので今年で2年目、5〜6年で成木になる見込みだそう。リリースできるかどうかはまだわからないけど。2樽くらいできるかも?

キジトラ
キジトラ

ところでめっちゃ草ボウボウですね

これは「草生栽培」(そうせいさいばい)。あえて草を自由に生やす栽培方法のこと。こうしておくと、雨が降っても葉っぱについた水分が蒸発しやすく、水捌けがよくなるんですって。さらにブドウに不要な土中のカリウムやリンを草が吸い上げてくれるのもメリットなんだとか。

そして、移動中に改装中の貴重な状態を見ることができました。

特別見学!築140年の日本家屋!

改装中の店舗の骨組みが見れました。
知人が言うには、これは松?すっごく立派な木材ですね。

勝沼醸造 松材の梁

そして特筆すべきが立派なヒノキの大きな柱です。
こんな大きいものは今ではもう手に入らないんですって。改装が終わったらあまり見えなくなるかもしれないので、この姿も貴重ですよね。

勝沼醸造 ヒノキの一本柱

ツアーメンバーのSさんがこの立派なヒノキに惚れ惚れし大絶賛。喜んで柱と一緒に写真を撮りまくっていました(笑)。すると、「そんなにお好きなんですか」と、特別に家屋の応接室にご案内くださったんです。

自慢のケヤキの一枚板テーブル

勝沼醸造 地区140年の日本家屋

以前は社長のお母様がお住まいだったと言う、築140年の日本家屋です。
こちらも日本遺産に認定されているんですって。

勝沼醸造 地区140年の日本家屋室内

見せていただいたのはこの大きなヒノキの一枚板のテーブル。この大きさ、この厚みになるには樹齢一体何百年……?という貴重なものだそう。このテーブル、普通にワイン会に使っていたそうです(!)

勝沼醸造 ヒノキの一枚板テーブル

ちょっと座らせていただいちゃった♪貴重なご案内をありがとうございました!

グラスギャラリーでビデオ視聴

続いてはグラスギャラリーで勝沼醸造の紹介ビデオを視聴させていただきました。
(現在工事中でクローズしているので、こちらも特別)

勝沼醸造 グラスギャラリー
画像は以前訪問したときのものです。

ビデオはBS-TBSの「日本遺産」(https://bs.tbs.co.jp/nihonisan/archive/season3.html)で取材された際の非公開映像なんだとか。インタビュー形式で代表の有賀雄二さんが詳しく話してくださってました。

紹介ビデオ所感

社長や息子さんたちのアツい情熱が伝わる、とても興味深い内容でしたよ。
ポイントをまとめるとこんな感じです。

世界で初めて認められた日本産ワインは勝沼醸造
・ワイン作りとは「土地と人」に価値を見出すこと。
・作り手の考え方や想いを伝えてもらうため、特約店のみ販売している。
・日本のワインはやはり甲州、これで世界に通づるワインを作るのが目標、
・ワイン用ブドウの栽培に日本は不向きと考えられていたが、先人が100年以上かけて礎を築いてくれた。

世界で初めて認められた日本産ワイン

世界で初めて認めれられた日本ワイン、と紹介していました。初めてとは知らなかったです!

調べてみたところ、こんなお知らせがありました。

2003年にフランス醸造技術者協会が主催する国際ワインコンクール「ヴィナリーインターナショナル」に於いて辛口甲州ワインで日本初の入賞

https://www.katsunuma-winery.com/oshirase/page/13/

この時評価されたワインは「甲州特醸樽醗酵1999」だそう。どのワインのことだろう?後のピッパのことなのかな?また近いウチ行って聞いてきますね!

大批判の冷凍果汁仕込み

甲州ブドウの糖度は平均して13~16度ですが、ワイン作りには22度以上欲しいそう。そこで、これまでは砂糖を足してワインを作っていたのですが、勝沼醸造がとったのは「冷凍果汁仕込み」という方法でした。

果汁を凍らせると凍るのは水分のみ。その氷(水分)を取り除けば「甲州の持っている成分だけが濃縮したジュースが得られる」という方法です。砂糖を足さずに甲州の本来持つ成分だけで糖度を上げる画期的な方法ですが、当時そんな方法は前例がなかったため「おたくの方針はおかしい」「この甲州は変だ」「テクニカルすぎる」など批判の声も多かったんだとか。

しかし、そのおかげで「おかしな甲州でないと世界に通じない」「おかしな甲州を作るのが私の目標」なんだと気づいたそうです。(たしかに……!)

この、冷凍果汁仕込みという方法で作られたワインがこちらの「アルガブランカ・ピッパ」です。

アルガブランカ
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キジトラ
キジトラ

ちなみに、私が初めて「日本ワインでこんなおいしいのあるの……!?」と驚いたのが、このアルガブランカ・ピッパでした。

夢のリーデル「甲州」グラス

勝沼醸造 グラスギャラリー ソムリエシリーズ
画像は以前訪問したときのものです。

ギャラリーにはリーデルのソムリエシリーズが陳列されています。

なんでこんなにグラスが並んでいるかと言うと、勝沼醸造がリーデルと提携している…のではなくて、社長はリーデルのグラスに惚れ込んで「甲州用のリーデルグラスを作って欲しい」と考え「日本のワイナリーがリーデルグラスのショールームを作っている」とリーデルの人が聞いたら来てくれてるんじゃないかと思って作ったんですって(笑)

なんと、そうしたら本当に来てくれたんですって!!!夢がありすぎる!!

そして甲州に合うグラスはどれか、各社集まってテイスティングをしたそうですよ。

勝沼醸造 リーデルグラス案内パネル
クリックで拡大します

その結果、甲州にはこの「シャンパーニュ・ワイン・グラス」が甲州の個性を最大限に引き出すグラスとして選ばれました。それからリーデルのシャンパーニュ・ワイン・グラスの商品名に「甲州」の文字も併記されるようになっています。

「甲州」にベストマッチなワイングラス (リーデル公式ページ)
https://shop.riedel.co.jp/products/detail.php?product_id=690

・リーデル・ヴェリタス『甲州』グラス ワークショップ (リーデル公式Youtube)

キジトラ
キジトラ

有賀社長が少年のように目を輝かせて、グラスや息子さんの話をされているのが印象的…

それではテイスティング!

それではお待ちかねの試飲に向かいます。
試飲サーバーは仮店舗にありました。

仮店舗は事務所の奥です。

勝沼醸造 改装中仮店舗案内

仮、とはいえほぼ完成したかのようなきれいなショップ&テイスティングルーム!

勝沼醸造 改装中仮店舗

ブドウ畑を眺めながら、いただきまーす。
テイスティングはリーデルのオバーチュアで飲めるんですよ!

勝沼醸造 改装中仮店舗 試飲テーブル

勝沼醸造の製品ラインナップです。
(※サーバーで飲めるワインはその時々によって異なります。)

勝沼醸造  製品ラインナップ

珍しいスパークリング用のサーバーもあるので、ブリリャンテも飲めます!

勝沼醸造 ワインサーバー ブリリャンテ

お伺いした日は、アルガブランカ ピッパの2016と2019がありました。
3年でこんなに違うなんて!寝かせたピッパ本当に美味しかった!

勝沼醸造 ワインサーバー ピッパ

ショップの上にはテラスになっていて、ブドウ畑を一望しながら飲めます!

勝沼醸造 屋上のテラス

めっちゃ見晴らしが良いので、お天気の良い日はぜひ登ってみてくださいね。

勝沼醸造 屋上のテラスからの眺め

質疑応答まとめ

質問にもたくさん答えてくださいましたので、以下にまとめました。

Q

改装したら、レストランや宿泊施設はありますか?

A

ここは今度売店になり、向こうは醸造所になります。プチワイナリーになるんです。

Q

ブドウにかさをかけるなんて、日本しかやらないですよね。

A

そうですね、ポルトガルの北部とか一部イタリアなんかでやるみたいですけど、向こうは基本は雨が降らないのでやりませんね。

Q

リーデルのグラスを売店でも販売しているんですか?

A

甲州グラスのみですが、購入可能です。

Q

温暖化の影響ってありますか?

A

まだここ30年位の気候変動では大きなダメージはない。むしろ、暑いことによって、ぶどうの成長が速くなっている。
特に甲州は他のぶどうに比べて収穫が遅いため、台風の影響を受けやすかったがここ数年は収穫を早めて自然の酸を残すことができるなどいい面もある。

Q

1番最初になったブドウは落として、2番なりのブドウでワインを作るっていうのもありますよね?

A

それも良い方法だと思うけれど、今農家さんの数が減っていってるので、ブドウが安定して入ってくるかと言う問題もある。 凝縮感のある葡萄ができて高いワインが売れていけばいいんですが、全体の数は減っていっているし、ワインの値段を上げるのも難しい。

補足:日本遺産 「葡萄畑が織りなす風景」について

日本遺産 「葡萄畑が織りなす風景」看板
クリックで拡大します。

日本遺産に認定されたのは、山梨市・笛吹市・甲州市(この3市エリアを峡東地域(きょうとうちいき)といいます。)に広がる「葡萄畑が織りなす風景」です。それには「甲州ワイン」「葡萄酒」「甲州式棚栽培」、そして「養蚕農家の特徴を持つ和風建築ワイナリー」などが含まれるそうですよ。ワイナリー名は明記されていませんが、掲載画像は勝沼醸造、丸藤葡萄酒工業、原茂ワインでした。(参考:https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/3805/

詳しくはこちらのサイトもご覧ください。

葡萄畑が織りなす風景|日本遺産ポータルサイト
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story060/

キジトラ
キジトラ

貴重なお話を本当にありがとうございました♪これでまた、勝沼醸造のワインがひときわおいしくいただけそうです!